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奈良地方裁判所 昭和45年(ワ)124号 判決

原告

増本喜枝

被告

出水田秋宣

ほか一名

主文

一、被告らは、原告に対し、各自金三八万四三七一円およびこれに対する昭和四五年六月一三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用はこれを三分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

四、この判決は、原告において金一二万円の担保を供するときは、原告勝訴の部分にかぎり、仮に執行することができる。

事実

(原告の陳述)

第一、請求の趣旨及び申立

一、被告等は原告に対し各自金一三四万四四七一円およびこれに対する訴状送達の翌日である昭和四五年六月一三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告等の負担とする。

三、担保を条件とする仮執行の宣言

第二、請求原因

一、原告は次のとおり交通事故により傷害を受けた。

(一) 発生時 昭和四四年一二月九日午後一時〇分頃

(二) 発生地 大阪府守口市南寺方東通一丁目二六番地先路上

(三) 事故車 普通貨物自動車(大阪一き四七二〇号)

(四) 運転者 被告 出水田秋宣

(五) 事故の態様 被告出水田は北から南へ向い進行中、前方に停車中の原告運転の自動車(以下原告車という。)に追突したものである。すなわち同被告は、被告坂本が営む運送業の従業員として貨物自動車の運転業務に従事するものであるところ、前記日時に事故車を運転し、前記道路を時速約三〇粁で北から南へ進行中、その前方に停車中の原告車に追突したものである。

(六) 傷害の内容 外傷性頸椎症、後頭部打撲症

二、帰責原因

(一) 被告出水田は、先行車に追随して走行する自動車の運転者は常に前方を注視し、前車が急に停車したり又は方向を転換した時でもこれに応じた措置を執つて衝突を回避することができるだけの完全な車間距離を保つべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然約三米の距離を保つただけで原告車に追随したため、これに追突して本件事故を惹起せしめたもので、本件事故は同被告の過失に因るものである。

(二) 被告坂本は、前記事故車を所有し、同被告の経営する運送業のために従業員である被告出水田に運転させていたもので、自動車損害賠償保障法第三条の運行供用者の責任がある。

三、損害

金一三四万四四七一円 内訳以下の通り

(一) 附添婦の費用 金一三万七〇〇〇円

昭和四四年一二月九日より昭和四五年三月一〇日までの間一日金一五〇〇円の割合による。

(二) 通勤のタクシー料金 金三万二〇〇〇円

原告は肩書地に居住し、天理市別所町八〇番地にある天理高等看護学院の教務主任をしているもので、本件事故の負傷のために右勤務先にタクシーで通勤することを余儀なくされ、そのために要した左のとおりのタクシー料金

昭和四五年一月分 二一日間で 金一万三四四〇円

同年二月分 二四日間で 金一万五三六〇円

同年三月分 五日間で 金三二〇〇円

(三) 奈良医大病院への通院費

タクシー料金二回分 金四九六〇円

(四) 附添婦の交通費

原告は、事故前は自家用車による通勤の帰途日常の買物をしていたので、特に買物のための交通費は支出しなくてよかつたが、事故後前記訴外花山恭子が附添をしていた間は同人がバスを利用して買物に行かなければならなくなり、その間四五回にわたり往復六〇円のバス料金の支出を余儀なくされた。従つて、その一回六〇円の四五回分金二七〇〇円を本件事故による損害として請求するものである。

(五) 逸失利益 金六万四七一一円

(1) 昭和四四年一二月分及び昭和四五年一月分の給料減額分 金五万九七八九円

(2) 昭和四五年七月期の勤務手当の減額分 金四九二二円

(六) 雑費 金二万三一〇〇円

内訳

サリドン 金一二〇〇円

サロンパス 金二〇〇〇円

ストーブ 金一万四五〇〇円

燃料 金五六〇〇円

(七) 慰藉料

原告は本件事故による負傷のため精神的苦痛を受けたが、その慰藉料としては金一〇〇万円が相当である。

(八) 訴訟に関する費用 金八万円

印紙代、切手代等 金三万円

弁護士費用 金五万円

四、よつて被告等に対し各自右損害額合計金一三四万四四七一円およびこれに対する本訴状送達の翌日である昭和四五年六月一三日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うことを求める。

第三、被告等の抗弁に対する答弁

本件事故は被告出水田の一方的過失に因り生じたもので原告に何等の過失はない。

(被告等の陳述)

第一、被告等の求める判決

一、原告の請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

第二、請求原因に対する答弁

一、請求原因第一項の事実中(一)ないし(四)は認める。(五)のうち原告の運転する自動車が停車中であつたという点は否認し、その余は認める。(六)は不知

二、請求原因第二項の事実中、被告坂本が本件事故車を保有していることは認めるが、その余は争う。

三、請求原因第三項の事実はすべて不知

第三、抗弁

本件事故は、原告車が、前方の大型貨物自動車を避ける為に被告車の進路に割つて入つて来て、しかも急ブレーキ措置を講じなくても前進出来た交通状況にあつたにも拘らず不必要に急制動をかけた為、被告出水田が急ブレーキをかけても間に合わずに追突した結果生じたもので、本件事故発生については原告にも過失がある。

(証拠)〔略〕

理由

第一、事故の発生と原告の負傷

一、請求原因第一項の(一)ないし(五)の事実(但し、(五)の事実のうち原告車が停車中であつたとの点を除く。)については当事者間に争いはない。

二、〔証拠略〕によれば原告が右事故により請求原因第一項の(六)のとおりの傷害を受けたことが認められる。

第二、本件事故の原因と事故当事者の過失の有無

一、本件事故は、既述のように被告出水田運転の事故車が原告運転の自動車の後部に追突した、いわゆる追突事故であるが、〔証拠略〕によると、その状況は次のとおりである。すなわち、本件事故現場の道路を原告車が先になり、事故車がこれに約五・六米の間隔を置いて後続し、ともに時速約三〇粁で南進中、先行の原告車が更にその先行車の停止するのを見て制動をかけたところ、原告車の停止を予期していなかつた被告出水田は、約三米に接近して原告車の制動合図に気付き、ただちに自己も急制動の措置をとつたが間に合わず、原告車に追突するに至つたものである。原告も主張するように、右のように先行車に後続する自動車の運転者には、先行車が急に停止あるいは方向転換した場合にもこれに応じた措置をとつて衝突を回避することができるだけの十分な車間距離を保ち、かつ先行車の動静を注視し、先行車が停止あるいは方向転換をしたならば、これに即応して停止し、あるいは安全に衝突を回避する措置を講ずべき注意義務がある。そして、後続車において右注意義務を尽してさえいれば、先行車において後続車の進路に不意に割りこんできたとか、制動合図をなさなかつた等自ら事故の原因を作るような行為がない限り、先行車が急停止したとしても追突は避けられる筈であるから、現実に追突事故が生じた場合、先行車に右のような特段の事情のあつたことが立証されない限り、原則として後続車において右注意義務懈怠の過失があつたものと認めて差支えない。ところで、本件の場合、〔証拠略〕において、同被告は、本件事故の際、同被告が三車線の事故現場道路の最も右寄りの中央線に接する車線を走行していたところ、その左側の別の車線を走行していた原告車が、その進路前方左側の道路上に停車中の大型貨物自動車を避けるために進路を右に変えて事故車の進路に割りこんできたので、車間距離を十分に保持することができなかつたものである、という趣旨の供述をしている。もし、これが事実であるとすれば、追突原因はむしろ原告にあり、その状況如何によつては同被告の過失が否定される可能性すら考えられるのであるが、右同被告の各供述のほかにはこれを裏付けるべき証拠はないし、原告の方では原告本人尋問(第一回)の結果において右事実を全面的に否定しているので、双方の供述のみではいずれとも確定困難であり、従つてこの点の原告の過失の存在については証明がないものとしてこれを否定せざるを得ない。そしてそのほかには原告の側の過失を認むべき証拠もないので、結局本件事故については原告には過失がなく、本件事故の原因は同被告において前記注意義務を懈怠した過失にあるものといわなければならない。

第三、帰責原因

一、被告出水田秋宣について

前項で認定したとおり本件事故は同被告の過失によるものであることが認められるので、同被告は民法七〇九条の不法行為による損害賠償責任がある。

二、被告坂本義春について

同被告が前記事故車を保有している事実については当事者間に争いはなく、〔証拠略〕によれば同被告は同人の経営する運送業のために右事故車を従業員の被告出水田に運転せしめていた事実が認められるので、被告坂本は被告出水田の本件事故車の運転につき運行支配を有し、かつ運行利益の帰属する者であり、従つて本件事故につき自動車損害賠償保障法第三条の運行供用者としての損害賠償責任がある。

第四、被告らの抗弁の当否

前記第二項で説明したとおり、本件事故について原告の過失を認めるに足りる証拠はないので、原告にも過失のあることを前提とする被告らの抗弁は理由がなく、これを採用することはできない。

第五、損害額の認定

一、附添婦の費用

原告は、事故当日より昭和四五年三月一〇日まで附添看護が必要であつたとして、その間の附添婦の費用を請求しているが、〔証拠略〕を綜合すると、事故当日より昭和四五年一月五日までは絶対安静で常時附添看護が必要であつたことが認められるが、その後三週間で病状の急性期を過ぎ、同月下旬にはすでに慢性期に入り、生活馴化のため軽労働に就くことも可とされていたことが認められるし、〔証拠略〕によつても、同月六日以降は不規則ながら原告も出勤しているくらいであり、その後は常時附添を必要とする程の病状とも考えられないので、右診断結果を勘案し、一月末日まで附添を要したものと認めることとする。そして、〔証拠略〕によると、原告の姪である訴外花山恭子が昭和四四年一二月一〇日より同四五年三月一〇日迄附添婦として原告と生活を共にし、その報酬として原告より一日金一五〇〇円の割合の金員の支給を受けていた事実が認められる。右一日金一五〇〇円の報酬額は同訴外人の附添介助の程度から考えて妥当な金額と考えられるので、一日金一五〇〇円の割合で附添開始の日である昭和四四年一二月一〇日より前記附添必要期間の終期である昭和四五年一月三一日まで五三日間分の合計金七万九五〇〇円を本件事故による相当因果関係の範囲内の損害として認めることとする。

二、通勤のためのタクシー料金

〔証拠略〕によれば、原告は、本件事故当時、天理高等看護学院の教務主任の職にあり、肩書住居地の自宅より自己所有の自動車で通勤していたものであるが、本件事故後昭和四五年一月六日から再び出勤するようになつたものの、前記傷害及びそれに伴う急性期及び慢性期のバレー症候群により、自ら車を運転することはもちろん、振動の激しいバスによる通勤も不可能であつたため、昭和四五年三月六日頃までタクシーで通勤せざるを得ず、同年一月六日から同年三月六日までタクシー料金として左記(1)ないし(3)のとおり合計金三万二一六〇円を支出した事実が認められる。

(1)  和四五年一月分往復金六四〇円が二一回、同金四〇〇円が一回、合計金一万三八四〇円

(2)  同年二月分往復金六四〇円が二三回、同金四〇〇円が一回合計金一万五一二〇円

(3)  同年三月分往復金六四〇円が五回合計金三二〇〇円

従つて、右支出は本件事故による相当因果関係の範囲内の損害として認められるので、原告の主張額金三万二〇〇〇円の限度で賠償額を認めることとする。

三、奈良医大への通院費

〔証拠略〕によれば、原告は、本件事故による受傷後の肩凝り、眩暈等の症状の治療のため、昭和四五年一月一〇日および同月一七日の二回にわたり奈良医大病院で治療を受け、その都度通院にタクシーを利用し、一回金二四八〇円、合計金四九六〇円のタクシー料金を支出した事実が認められる。右支出は、本件事故による傷害の治療の為に必要な通院費用と認むべきであるから、右金四九六〇円は本件事故による相当因果関係の範囲内の損害として認容する。

四、附添婦の交通費

〔証拠略〕によると、原告の請求原因第三項の(四)の事実を認めることができる。しかし、右交通費は、附添をしていた訴外花山恭子が原告に代わつて原告の肩書住居から天理駅前のシヨツピングセンターまで買物に行くために利用するバス料金であるが、右各証拠によつては、原告の住居地の周辺の交通機関を利用しないですむ範囲内で日常の買物の用を足すことができないものかどうか明らかでないうえ、もし原告の住居地が天理駅前まで行かなければ買物ができないような地域的条件のところであるならば、その地域の普通の居住者にとつては買物のため交通費は日常当然必要な費用であり、偶々原告が自家用車通勤という特殊な利便にめぐまれていたがために、その出費を要しなかつたということになるものである。なるほど事故がなかつたならば原告としては支出を要しなかつたという意味で、その出費は本件事故と因果関係がないとはいえないけれども、むしろそれは右に述べたようにその地域の居住者である以上事故の有無にかかわらず通常の生活費用として支出する範囲内のものと見るべきであり、原告は前述のような特殊な条件にあつたために特に損失という形で現れることになつたものであるから、本件事故と相当因果関係の範囲内にある損害というには不適当と考えられる。よつてこの点の費用の損害賠償は認めないこととする。

五、逸失利益

〔証拠略〕によれば、原告は本件事故による傷害の結果、昭和四四年一二月一〇日から同四五年一月五日迄欠勤した為、前記勤務先から支給されるべき給与および手当が給与については金五万九七八九円、年度末手当については金四九二二円、それぞれ減額されることになつた事実が認められる。右減額分合計金六万四七一一円は本件事故の結果生じた損失であり、相当因果関係の範囲内の損害として認められる。

六、雑費

(一)  〔証拠略〕によれば、原告が前記症状の治療の為にサリドン二〇〇円六回合計金一二〇〇円、サロンパス二〇〇円九回、一〇〇円二回合計金二〇〇〇円の各薬剤を購入して使用した事実が認められる。前記のような原告の傷害内容とバレー症候群各症状を考えると、右薬剤の使用はその症状の緩和に必要なものと認められるので、原告主張のとおり右合計金三二〇〇円を本件事故による相当因果関係の範囲内の損害として認めることとする。

(二)  更に原告は雑費として石油ストーブ購入代金およびその燃料費を請求しているが、〔証拠略〕によると、これは前記のとおり訴外花山恭子が原告の附添介助のために原告方に同居するようになつたため、同女の居室の煖房用に原告が新規に購入した石油ストーブの代金と同女が原告方に滞在中に費消したそのストーブの燃料用石油の代金である。なるほど原告は、事故前は、アパートの三部屋のうち実際に使用する四畳半の一室と台所の煖房を一台のガスストーブでまかなつていたもので、前記附添婦の訴外花山恭子が他の一室に寝泊りするようになつたため、更にもう一室の煖房用に新たなストーブとその燃料が必要になつたというのであるから、その支出と本件事故との間に因果関係がないとはいえない。しかし、一般の家庭においても、煖房器具は居住者のために最小限必要な分のみでなく、不時の来客や宿泊客に備えて、余分の一室分程度の煖房設備を用意しておく場合が多いのではないかと考えられるし、原告の居住しているアパートの三部屋程度の部屋数であれば、もう一台予備のストーブあるいはその他の煖房設備があつてもよかつた筈である。家族数、住居の規模、部屋数に応じた普通の家庭で常備が予想される程度の煖房設備とそのための燃料費は、本来その家庭の通常経費と見るべきものであつて、事故のような突発的な事態の有無にかかわらず、一戸の世帯を構える者が通常負担すべきものと考えられる。ただ原告はその用意がなかつたため、今回の事故の際に新規購入を余儀なくされたものではあるが、そのストーブは今後も本件事故とは無関係に原告方における煖房設備として利用できるものであり、このように事故の有無にかかわらず普通の状態でも常備してしかるべき程度の範囲の設備、備品等が偶々欠けていたために新たに購入しなければならなくなつたような場合は、事故による相当因果関係の範囲内の損害と見ることは適当ではないと考えられる。従つて、この分についての損害賠償請求は認容しないこととする。

七、慰藉料

〔証拠略〕によれば、原告は本件事故により前記のように外傷性頸椎症、後頭部打撲症の傷害を受け、そのため事故当日の昭和四四年一二月九日より昭和四五年一月五日まで自宅で安静加療したが、その後も同年三月初旬まで頸性頭痛、項肩部筋硬結、眩暈、耳鳴、吐き気等の急性期および慢性期のバレー症候群の症状が続き、その為原告は昭和四五年一月六日以降は前記のように勤務先に出勤するようになつたものの、半日のみで早退したり、出勤しても実際に勤務をすることのできない場合もあり、とうてい正常勤務はできない状態が三月六日頃まで続いた事実が認められ、その他本件事故の状況、被害の程度、原告の境遇など諸般の事情に鑑みると、原告が本件事故によつて蒙つた精神的苦痛を慰謝すべき金額としては金一五万円が相当と認められる。

八、訴訟に関する費用

(一)  弁護士費用

〔証拠略〕によると、原告が辻中栄太郎弁護士に本件訴訟の訴訟代理の委任をなし、着手金として金五万円の支払をなしたことが認められる、そして本件事故についての相当因果関係の範囲内の損害として弁護士費用を計上するには、本訴における請求認容額を基礎とし、事案の内容と本訴における訴訟活動に照し、適当と認められる報酬額を算定すべきであるが、本訴における弁護士費用以外の損害賠償認容額は以上の第一ないし第七項の損害額の合計金三三万四三七一円であり、計算の便宜上端数を切上げて金三三万五〇〇〇円としたうえで、日本弁護士連合会所定の報酬等基準額に照して考えると、本件の場合少くともその一〇〇分の二〇程度の額を適当な報酬額と認めるので、その範囲内である原告の金五万円の請求額をそのまま肯認することとする。

(二)  印紙代、切手代等

原告は、弁護士費用のほかに、訴訟に関する費用として印紙代、切手代等金三万円を請求しているが、その印紙代および切手代が、本訴の裁判費用のそれであるならば、それは本訴の訴訟費用の中に含まれるものであり、従つて、民事訴訟法第九五条により裁判所において当然訴訟費用の裁判によつてその負担者を定めることになるものであつて、その結果被告らの負担に決定した分については、原告において、訴訟費用額確定決定を経て被告らに対し償還を求めることができることになるので、これと別個に当該訴訟における訴訟費用について実体法上の原因にもとづき更に重複して給付判決を求めるのは全く不必要なことであり、権利保護の利益を欠くものというべきであるから、この請求は認められない。また、右印紙代等が訴訟費用以外のものを意味するとしても、その具体的内容について何ら主張立証がないから、いずれにせよこの請求は失当である。

第六、結語

以上の理由により、原告の請求は、右第五項において損害賠償を認めた金額の合計金三八万四三七一円およびこれに対する各被告に対する訴状送達の翌日であることが記録上明白な昭和四五年六月一三日から支払済まで民法所定の年五分の割合の遅延損害金の限度で正当として認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を、各適用して主文の通り判決する。

(裁判官 高橋史朗)

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